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【難波津の春】 |
春になると、難波の四天王寺の名物、聖霊会を思い出します。聖霊会とは、4月22日の太子の命日に執り行われる舞楽法要のこと。雅楽は大陸伝来の芸能ですが、日本で作曲されたものもあり、童舞の「胡蝶」などもそのうちの一つです。
私が訪れたとき、聖霊会の野外舞台ではちょうどその「胡蝶」がかけられていました。春風の中で舞う子どもたちのかわいらしい姿が、とても印象的でした。
今では繁華街のなかに埋もれている四天王寺ですが、往時は難波津に臨み、ゆきかう船を見下ろしていたそうです。西方極楽浄土を意識して建立された伽藍、その金堂には観音、勢至の両菩薩を脇侍に従えた阿弥陀三尊が安置され、西を向いて並んでいました。
九州からやってくる船は、難波に近づくにつれ、西日を受けて輝く四天王寺の伽藍がはっきり見えてきたことでしょう。そして、九州に向かう船は、四天王寺の阿弥陀三尊の慈眼に見送られ、筑紫の海を目指したことでしょう。