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【篠笛】 |
東京の五月の風物詩といえば神田明神、山王日枝神社の天下祭、浅草の三社祭に鳥越神社の例大祭。今年もいくつか見物に行きました。祭りを盛りあげるのがお囃子。東京の葛西系のお囃子は五人囃子が基本で、笛、大太鼓、摺り鉦に小太鼓が二つ。そのなかで私の心をつかんで離さないのが、唯一の旋律楽器である、篠笛です。
長唄に「笛になりたや篠笛に、笛は思いを口うつし」とあるように、笛の遠音はどこかなつかしく、言葉を越えて人の叙情に直接訴えかけてきます。人の吐く息が、一本の竹の管を通過するときに、音になる。人それぞれの思いが、音になる。源氏物語をはじめ、幾多の文学作品にも、笛の音によって人の心が通じ合う場面が描かれています。
これから夏本番。弘前ねぶた、青森ねぶた、秋田竿灯、能代ねぶながし、西馬音内盆踊り、今度は東北に舞台を移して夏祭が華やかに繰り広げられます。
篠笛の音に誘われて、またどこかへふらりと旅に出てしまいそうです。