2005年【長月号】
vol.59

【月のうさぎ】

 「月にはうさぎが住んでいて、いつも餅をついている」とは、いくつぐらいまで信じていたでしょうか。幼いころは月の美しい季節になると、その話を思い出しては夜空の輝きに目を奪われたものです。
 世界中で月が様々な文様に見立てられるのはよく耳にしますが、うさぎの姿が見えるという伝説が、実はインドのジャータカ神話に由来すると知ったのは随分大人になってからでした。
 この物語は中国で発展し、「うさぎが月で月桂樹の葉をついて、不老長寿の薬を作っている」というお話に生まれ変わります。さすがは漢方の国です。これが韓国や日本につわって今に至るのですが、その時、薬をついていたはずのうさぎが、なぜか餅つきをするようになっていきます。道具や動作に大差がないとはいえ、そのようなことを考え出した当時の大胆な発想には感心してしまいます。名月に想いを託したちょっとくいしんぼうな先祖を思い、今年はいつもと違った夜空を楽しむことができそうです。


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