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【梅の後か桜の前か】 |
梅や桜とならんで春を代表する桃の花木は、古くから仙木・仙果
とよばれています。不老長寿の効用や、邪を退ける力があるなど、霊験あらたかな植物として親しまれてきました。
桃が登場する物語に『西遊記』がありますが、これは楽園の桃を無断で食べた孫悟空が、女神の怒りにふれ、天界から追い出される場面
から始まります。いたずら好きの孫悟空らしいエピソードですが、波瀾万丈の長旅の始まりが、桃の実を食べてしまったことに因るとは、案外知られていないように思います。この桃が日本に渡来したのは、推定五世紀。『古事記』や『日本書紀』にも書かれていますので、随分古くから日本人にも親しまれてきた植物だったことがわかります。
三月三日の「桃の節句」は、中国の「禊祓(けいふ)の行事」にルーツをもち、今日、「雛祭り」とあわさって盛大に行われるようになりました。子供の無病息災や多幸を祈る親の心が、桃の花木に託されて形になったものといえそうです。