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【暦の潤い】 |
チベット暦、マヤ暦、ヘブライ暦、イスラム暦…。世界には、独自の暦を持つ国や民族が数多く、日本にも、太陰太陽暦という旧暦があります。中国から推古天皇の時代に伝わった、年中行事のナビゲーターで、月のサイクルと四季の巡りをベースに作られる暦です。この暦をもとにした日本人は、自然のリズムとシンクロする、独特の生活臭を放ってきました。
明治六年。文明開化の大イヴェントに、グレゴリオ暦が敷かれます。この新暦は、太陰太陽暦で育まれてきた習慣の独自性に、蓋をする形になってしまいました。
ヌーベルヴァーグの直輸入から一世紀以上経った今、季節感の薄らいだ現代人のあいだでは、民族カレンダーや旧暦に対する需要が高まっています。まるで、人工皮膚の内側から、失った本来の感覚を取り戻そうとするかのようにもみえる動きです。「自然のリズムとシンクロする生活を!」と望む声は、ここへきて、ますます盛んになっているようです。
忘れかけられた旧暦を見直すこと。それは、元来の「潤う国」、ニッポンの気配を探ることにもなりそうです。月をなごみ、季節のうつろいに感謝する。こんな日を過ごすのも、素敵なものではないでしょうか。