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【キイチゴ】 |
爽やかな五月晴れ。日曜日の散歩の途中に、キイチゴの自生する一角に遭遇した。
青々と繁らせた葉やヘタのなか、深い赤の小粒たちが、ひょっこり顔を見せている。
それが何とも云えず、愛らしい。
そういえば、平安時代の清少納言が、キイチゴの愛らしさを『枕草子』にこんな風に書いている。
「あてなるもの…いみじう美しき児(ちご)の覆盆子(いちご)などくひたる…」
(「愛くるしいもの」っていうと、それはね、とっても可愛らしい童が、イチゴなんかを食べている姿だわ…)
当時の法典『延喜式』にも、このときすでに「イチゴ」の栽培が始まっていたことが書いてある。ヨーロッパの国々でイチゴ栽培が始められたのが、十四世紀になってからなので、それにくらべると、日本は四百年も先駆けていたことになるのだ。日本人とイチゴは、意外と付き合いが深いんだな。
やわらかな初夏の日差しに包まれたイチゴたちを見つめていると、その愛らしさに、思わず笑みがこぼれてしまう。