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【花見弁当】 |
桜の森の満開の下で食べるお弁当は、さまざまな思い出がよみがえっていっそうおいしく感じられるものです。我が家にとって、家族でくりだした裏山での花見弁当がそれにあたります。
父の一声で、あひるの家族のように一丸となって動く習性のあった我が家では、「お稲荷さんをもって花見にいこう!」という父の突然の思いつきに、大慌て。急遽、母は寿司飯を炊きはじめ、小学生の娘たちは油揚げやしいたけ、竹の子などを買いに走らされたものでした。
家の中に立ち込める寿司酢の香りと、油揚げを煮る甘辛い匂いが、五臓六腑を刺激します。四人の子供たちがにぎると不恰好そのものですが、自分のものがどれよりもおいしそうに見えるから不思議でした。
お弁当は、ふたを開けた瞬間に、作った人の心が一目でわかるものです。花見といいながら花をほとんど見なかったりしますが、今年はちょっと、横目で花見弁当の中身を覗き見してみるのも一興かもしれません。