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【除夜の鐘】 |
一年の終わりと始まりに日本中を駆けめぐる音。それが除夜の鐘です。心を落ち着かせて耳を澄ますと、一定のテンポで強弱に撞かれていることがわかります。まるで指揮者のいない永遠の音楽に聞こえてくるから不思議です。
最近では夜の十二時から鐘を撞き始める寺も増えましたが、正式には大晦日に一〇七回を、最後の一回は年が明けてから撞くのだそうです。一〇八回を丁寧に撞いて、一年間にたまった煩悩を、深く力強い音の振動で振り落としていきます。
梵鐘をじっくり見ると、イボのような突起に気がつくでしょう。音の余韻を生む「乳」です。数が一〇八個の場合が多く、室町時代後期から流行した日本特有のスタイルといいますが、一〇八煩悩をなぞらえた「乳」の数と聞くと、ご先祖さまたち遊び心に笑みがこぼれてしまいます。
今年も年が暮れようとしています。鐘の音が届く頃、一年を無事に終え、また新しい年を迎えられる幸せに感謝を捧げたいと思います。