2003年【師走号】
vol.38



 
 十二月二日と三日、竹若番(たけわかばん)(博多区冷泉)の宝照院(ほうしょういん)では、素朴ながらどっしりとしたお姿の大黒様がご開帳になり、年に一度の「大黒天福迎祭(だいこくてんふくむかえさい)」が行われる。
 柔和なほほえみをたたえた大黒様の前には、三斗七升の特大の紅白の重ね餅が供えられ、お詣りの人には福笹やぜんざいが振る舞われ、福引きもあって一日中賑わいを見せる。
 宝照院のご先祖は、宝満山の山伏「奧之坊」で、実はこの大黒様も、明治のはじめに宝満山から下ってこられた。奧之坊は「大黒寺」ともいわれ、この大黒様は多くの人々の信仰を集めてきた。
 伝教大師がお作りになったというこの大黒様は、「塩売大黒」または「塩振り大黒」と呼ばれ、次のような話が伝えられている。
 ある年のこと、宝満山は大雪で山伏たちは山に閉じこめられ、塩がなくて困っていたところ、坊の台所に塩が届けられていた。「こんな雪の中、いったい誰が?」と不思議に思い外を見ると、雪の中に草鞋の痕がついている。足跡を辿ると、「大黒寺奧之坊」に至り、扉をあけると本尊の大黒様の前に、雪を踏んだ草鞋ちゃんと揃えられていた。人々は、「大黒様の奇瑞」だと喜び、ますます崇め奉ったのであった。

宝照院の大黒様
【きものをきる】
 最近、洋服もいいけど、和服を着こなせる女にもなりたいという声をよく耳にするようになりました。ただ、和服はいろいろと面 倒なので、初めの一歩を踏み出すことができないでいる人が多いようです。
 都度に思うことは、着物を気楽に着たっていいじゃないか、ということです。あまりに高級なものは別 としても、着物でお出かけできるのは、とても気持ちのいいものです。ただそれには、物質的なものとともに心と体をニュートラルにする準備も必要に思います。
 というのも、体には思っている以上の日常生活の癖や、洋服用の緊張があります。これをほぐしてあげたほうが、着崩れしにくくなるのです。冗談ではなく、疲れにくい着付けもできますので、一度試してみていただくといいでしょう。
 眠っている箪笥の肥やしを引き出すもよし、古着屋で手頃に求めるもよし。まずは自分にあった着物を準備して、心と体を解放してあげてください。おしゃれの世界はぐんと広がります。

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