おいしいものには、おいしく食べられる期間があります。
鶴乃子でいうと、14日間。それを、賞味期限というかたちで表示するようになったのは、昭和30年頃からです。それまでは、箱の中に松の葉を入れていました。
なぜ松の葉を添えたのか。それは、鶴乃子が固くなって食べられなくなってしまうまでの日数と、松の葉が深い縁から茶色に変色するまでの日数が、ほぼ同じだからです。しかも、湿度が低すぎると鶴乃子は通常より早く固くなりますが、同じように松の葉も早く茶色に変化します。そして、鶴と松は縁起のいい組合せであるうえ、白と緑のコントラストが見た目にもうつくしい。これは、創業者石村善太郎の知恵でした。賞味期限の表示は日付に変わりましたが、自然のよさを生かしたお菓子づくりの精神は、100年の時を超えて受け継がれています。
どんたくは、正月が来るとその年の新しい神様が降りてくるという松のめでたさに託した、年賀の松ばやしが起源だそうです。博多を代表する祭り、どんたくと、博多の銘菓鶴乃子。どちらも松にゆかりが深いのは、偶然でしょうか。博多どんたくを見に来たら、おみやげに鶴乃子をどうぞ。
どんたくのように博多のこころが古くから息づいてきたお菓子です。