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【畳】 |
元来、建築尺度から定まってきた畳のサイズは、「座って半畳、寝て一畳」といい、人間の居方と場所を定めてくれるものでありました。現代建築家が好む三間(五・四m)という尺度は、三間×三間、十八畳。これは元々能舞台の寸法であり、蹴鞠のスペースであり、ボクシングリングのサイズでもあります。
畳は人間の心の距離をはかる尺度の「基本」と考えられていて、他人と向き合って何かをする時、坐っていても立っていても、具合のいい大きさをあらわす目安ということになるようです。
距離というだけでなく、空気に触れて表情や匂いを変える畳は、一室で向き合う他人同士の微妙な心の間に入り込み、スッと優しく包み込んでくれる身近な母胎のような存在です。
日本人の生活様式も洋風の面が多くなってきましたが、多くの家に今でも畳の空間が一部屋ぐらいは残されているのも、なんとなく、わかるような気がするのです。