2003年【霜月号】
vol.37

 十一月、満開の菊、青空に映える紅葉。そして晴れ着姿の可愛らしい子供たち。七五三です。七歳・五歳・三歳は子供の成長の節目とされ、その年まで無事に育つよう守ってくださった氏神様にお礼詣りをするのです。
 昔は、七歳の女の子は「帯祝い」「ゆもじ祝い」といい、それまでの紐付きの幼児の着物をやめて、初めて腰巻きをまき帯をしたのです。男の子は五歳で「袴着(はかまぎ)の祝い」をし、三歳では、男女ともに十一月十五日に「お膳座りの祝い」をしました。博多ではこの時ポッポ膳を使いました。
 白木に泥絵の具で、松竹梅・鶴亀というめでたい図柄が、簡素ながら味わい深く描かれた可愛らしいお膳。ポッポは「鶴ポッポ」のポッポで、鳥の幼児語からきています。博多の工芸品としてご存じの方も多いと思いますが、このお膳は馬出(まいだし)の曲物(まげもの)師の家で作られます。
 三方(さんぽう)を作るように、膳の縁になる部分の四隅にあたるところに、浅く鋸目を入れて曲げ、継ぎ目は桜の皮で縫い、平らな板と組み合わせ足をつけます。男の子用は「ひもとき二重繰り」といって二寸の高さ。女の子用は「ひもとき三寸足」または「四寸足」と言い、女の子用が高いのです。女は正座をし、男は胡座(あぐら)をかくということでしょうか。
 ポッポ膳の上には、漆の小四つ椀(飯椀・汁椀・木つぼ・平椀)にご馳走が盛られ、尾頭付きの魚が皿に盛られます。男の子用は外側が黒・内側が朱色、女の子用は外も内も朱一色の器です。
 今ではこのような儀式をする家も、ほとんどなくなりました。でも子供の健やかな成長を願う親心は何時の時代も変わりません。今年も全国の神社は、家族揃っての七五三詣りで賑わうことでしょう。


ポッポ膳(男の子用)

【服茶(fukutya)

 お抹茶を頂くことを服茶といいます。「二服点で」、「どうぞご自服を」というように、茶を数えるときには「服」の字を当てるのが通 常です。二日酔いに効き、パッと目が覚める作用があるので、古くは薬と同じように使われていました。「服」の字には色んな意味がありますが、喫茶には「体内に吸収する」というのが適当なようです。
 服茶の前に食べるお菓子は、またいっそうにお抹茶のうまみを引き出します、なにより口の中に広がる甘みは疲れを補ってくれますし、脳の働きを活性化してくれます。ほんのちょっとでも口にしておくと、随分と茶がうまく感じられるものです。
 点てられた茶を手にしたら、そこに精神を集中するように心がけてみてください。いつも走りつづけている日常に、句読点をいれましょう。茶碗の肌目、濃い緑色、はなをくすぐる香を楽しみます。5感を意識することこそ、茶の醍醐味です。
 最後はぐっと一服、「ほっ」。あとは体中に気が満ちてきます。

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