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【旬のもの なまこ】 |
寒さが増し「柚子の出回る頃に美味しくなる」といわれる海のいきものがあります。冬至のものが絶品とされる「なまこ」です。
夏目漱石に、「なまこを最初に食べた人は、たぶん相当に勇気をもった奴だったろう」と言わせたように、その姿といえば、ぬらぬらのいぼいぼで、目も尾ひれもなくて、本当に不気味で醜悪なのです。
そのなまこが、日本人とは古い付き合いであることをご存知でしょうか。
この不思議な海の生き物は、古くは『古事記』に登場し、茶道の茶会記『利休百会記』にも好まれた様子が残されています。江戸時代には鮑、フカヒレとともに三俵物とよばれ、特に中国への貴重な輸出品として活躍していました。
なまこのからだは90%以上が水分で、旨み成分などはわずかなたんぱく質だけです。その美味も、ただ、「海の味がする」ばかり。ご先祖様たちが、このシンプルさに魅せられてきたことを思うと、グルメって一体何なのだろうと考えてしまうのです。